「あ・・・」
微かに呟きを漏らした男をカナンは振り返った。
「何だ?」
振り返った視線の先では、誰よりもよく見知った顔が少しばかり動揺と困惑の表情を浮かべていた。
主君が振り返ったことに数瞬送れて気付いた男は、表情を改めると慌てて謝罪の言葉を口にした。
「は、はい、あ、いえ、申し訳ありません。な、何でもありません」
その答えで「何でもない」わけはないだろう・・・と胡乱げに見上げる。
生来の好奇心の強さとこの男に対する感情から、いつもなら容赦ない追及を始めているところだが、今日はそういう気分でもなかった。
「おかしな奴だな」
声音は、決して不機嫌なものではなかった。
カナンは再び歩を進め、従者たる彼もそれに倣った。
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