たまに、朝なんて来なければいいと思うことがある。
■ 独占欲 ■
BY 九堂 紫
照明を落とした室内で、まず、白いシーツの海に散らばる豪華な黄金が目に入った。
セレストは、広がる金糸に指を絡める。
絹のような感触を楽しんで、そこに唇を落とした。
いつもは太陽のように光り輝くこの髪も、闇の中ではさながら月のように輝きを変える。
満月色のように、優しく淡い光を放つそれ。
洗い髪のままベッドにもつれこんだ為、まだ髪はしっとりと湿り気を帯びている。
そのせいかもしれなかった。
満月色の髪の下にはまだあどけない寝顔。
そして、ぼんやりと浮かび上がる白い肌。
そろそろ汗は引いたところだろうか。
先程まで熱く火照っていたのが嘘のように、滑らかな静かな手触り。
閉じられた睫毛も長くて。
整った顔立ちは、彼の纏う色彩もあいまって、豪華な陶器人形を思わせた。
けれど。
「温かい・・・」
確かに息づく脈動。体温。
それを確かめるように。
あるいは、その温もりを守るように。
セレストは華奢な体を自分の腕の中に包み込んだ。
「ん・・・」
起こしてしまうかと思ったが、余程疲れているのだろう、
寝惚けた声を出して、あとはこちらに擦り寄ってきた。
無意識の行動ほど性質の悪いものはない。
正気のときならば、こんなにも素直に甘えてきてくれるかどうかは甚だ疑問だ。
セレストは彼の肩口に顔を埋めて彼の香りを肺の底まで吸い込んだ。
全身で彼を感じる。
そうして初めて自分は安心できるのだ。
体を繋げたあとのこんなゆるりとした時間。
この瞬間はいつも、セレストに幸福感と、僅かな焦燥感をもたらした。
細胞まで溶け合うような感覚を味わった直後だからかもしれない。
少しでも離れていることが許せなくなる。
彼をいっぱいに感じ、そして彼を自分でいっぱいにしたい。
時間が経つにつれ、触れ合う回数が多くなるにつれ、
そんな思いは弱まるどころか強さを増すばかりだ。
これを何と呼ぶか知っている。
だから、これ以上、もう、自由に笑い、話し、動くこの人を見たくない。
朝なんて永遠に来なければいい。
だって今なら腕の中にちゃんとこの温もりを捕まえているから。
けれど同時に。
この瞳が早く開かれるように、
そして早く自分を映してくれるように、
切に願っているということも、彼は知っていた。
「カナン様・・・」
夜が明けるにはまだもう少し時間があった。
2002.03.05アップ
セレストさん、余裕無さ過ぎ。黒セレストのはしり。(?)