『密なる・・・』
奈落王の居城たるこの城、その敷地内に有する森の一つ。
その奥深くに光差す場所がある。
そのときそのすぐ近くまでプラチナがやってきたのは9割の偶然と1割の必然だった。
プラチナは政務の合間の息抜きに森を散策していた。
気候も肌に丁度良く、いつもより少し遠くまで来ていたかもしれない。
そのとき、プラチナの感覚が異常事態を捉えたのだ。
天使の気配。
それは一瞬大きく膨らみ、それから弾けて消えた。
一瞬だったが確かに天使の気配を感じたプラチナは、すぐさまその方向を目指して駆け出した。
そこでプラチナは目にする。
白い羽根が舞う中、悠然と立つ己の参謀の姿を。
「・・・っ」
不意に、その羽根がまるで彼のものであるかのような錯覚に陥った。
既に彼に翼はないとわかっている筈なのに。
我に帰るのに数瞬を要した。
それからプラチナは漸く先程の気配の主に気付いた。
もっとも、もはやその気配は失せていて、微かにその残り香が漂うのみだったが。
座り込んで大木に力なく寄りかかる天使。
白い羽を真っ赤に染めるおびただしい血は、天使が既に事切れていると知るに充分だった。
プラチナは痛ましそうに眉根を寄せた。
どうしようもないことはわかっているが、それでも割り切れないこともある。
せめて彼の魂が解放され、何処かへ還れるよう、ただ祈るばかりだ。
と、ジェイドが動いた。手を伸ばす。
プラチナはその動きを目で追った。
ここからでは後ろ姿しか見えない為、何をしているのかはよくわからなかった。
ただ、ジェイドが掬い上げるように宙で掴んだ何かをそっと手の中に握り込むのがわかった。
咄嗟に羽根だと直感した。
感触を確かめるように。
とても大事なものに触れるような手つきに、プラチナの心臓がどくんと大きく音を立てた。
息が詰まる。
その痛みをやり過ごすと、プラチナはその場をそっとその場を離れた。
逃げ出した、のだ。
2002.08.04アップ