【魔眼】
「これが十年前に盗まれた"悪魔の眼"か」
カボションカットの大粒のルビーに明日叶は視線を落とした。
とろりと紅が滴り落ちそうな錯覚すら覚える、見事なピジョンブラッド。
薄暗い倉庫の中で、さらに分厚いガラスケース越しにも、その存在感は際立っていた。
「すごい…」
「本物なら、な」
感嘆の声をもらす明日叶の後方で、ディオがそう付け足した。入り口近くに立ち、外の気配をうかがいながらだ。
明日叶も応えて頷く。
そうだ。今回のミッションは、この"悪魔の眼"を筆頭にこの倉庫の中の美術品が本物かどうかを確認し、
本物であれば発信機を仕込んで最終的な行き先を突き止めること。
この倉庫の所有者は表向きは清廉な人物で通っている財界の著名人であるが、
他にもいわくつきの盗品を所有している疑いがあった。
その在り処を探ることが今回のミッションの目的だ。
倉庫の中には他に眞鳥とヒロもいて、それぞれ、金庫や箱に仕舞いこまれた品をひとつひとつ取り出し、確認している。
「明日叶ちーん!怪しそうなものはまとめて並べとくから、それが終わったらこっちの確認もよろしくー」
「わかった」
にっこり笑って手を振ってくるヒロに応えつつ、明日叶は、まずはこれだと再びルビーに向き合った。
小さく深呼吸すると、意識をルビーに集中させる。
主たる明日叶の求めに応じて、真実の目が開く。
この目は、ガラス越しであろうと関係なく、そのものの真実を伝える。
一拍置いて、脳裏に届けられるプロフィール。これまで、この宝石が辿ってきた過去。
製作者とその年代から、本物に間違いないだろうと判断した明日叶がトゥルーアイズを閉ざそうとしたとき、
不意に、別の視覚イメージがぼんやりと浮かび上がってきた。
まだ何かあるのだろうかと気になり、さらに深く視る。
赤い―――?
このルビーの色だろうか。――いや、これは。
血。
ぽつりと浮かんだ映像に、明日叶は息を呑んだ。
遮断――!
だが、間に合わない。
次の瞬間、おびただしい血の色と死臭が一気に脳裏を埋め尽くす。
たった一瞬で脳裏にこびりついた凄惨な光景は、奇妙なほどの臨場感で明日叶に襲い掛かった。
赤。紅。あか。視界一面を埋め尽くすほどの、血。
「…っぐ…」
たまらず嘔吐した。
本能的な嫌悪感。それ以外は何も考えられなかった。
突然口元を押さえて膝を折った明日叶の異変に、最初に気付いたのはディオだった。
「明日叶?おい…おい、明日叶!大丈夫か!?」
駆け寄ると、明日叶の身体を抱きかかえるようにして、背を擦る。
それから即座に通信機に向かって「ミッションは一旦中止だ!撤退する」と小声で鋭く叫んだ。
「…待、て…ディ……」
「いいから、お前は少し黙ってろ」
喘ぐように言葉を紡ぐ明日叶に、優しくも強引な響きを押し付けると、ディオは明日叶を素早く抱き上げた。
何事かと驚いたようにこちらを見ているヒロと眞鳥に後を頼むと言い残し、倉庫をそっと抜け出した。
「駄目だ、ディオ。ミッションが…」
「んなこと言ってる場合か!第一、その状態でミッションなんて続けられるわけないだろうが」
こういうとき、ディオは感情的に文句をぶつけることもなければ、逆に変に甘やかすこともしない。
ただ、事実を冷静に突きつけてくる。
このときばかりは、いつも装っている軽薄な部分が完全に消えうせ、チームのメンバーとして、
サブリーダーとして、最善を尽くそうとする姿勢が見える。
だから、こういうときのディオには反論ができない。
全面的にディオの言が正しいとわかっているからだ。
それに、確かにディオの指摘通り、悲鳴を上げ続ける精神は、限界を訴えていた。
「ご、めん…ディオ…」
謝罪の言葉をすべり落とすと同時に、明日叶の意識は白い闇に飲み込まれていった。
目を開けると、見慣れた天井が見えた。
「明日叶、気が付いたか?」
視線を横にスライドさせると、そこには眉間に皺を寄せたディオの姿があった。
「ディオ…」
きっと心配させてしまったに違いない。謝ろうとディオを再度見上げると赤い髪が目に入った。赤い――
「…っ」
「明日叶!」
身体を折り曲げて口元を手で覆った明日叶に、ディオが声をあげる。
「ご、め…。もう、大丈夫」
嘔吐感を何とかやり過ごすと、明日叶は何度か浅い呼吸を繰り返し、漸く落ち着いた。
用心しながらゆっくり目線を上げる。
「ごめん、ディオ。心配かけた」
今度は大丈夫だった。そのことにほっと安堵しつつ改めて謝罪するが、
謝られたディオの方は安堵どころではなかったようだ。
「どうしたっていうんだ、明日叶」
「え…べつ、に」
「別に、ね。とてもそうとは思えねえけどな」
「…」
確信を持った言葉に、思わず口ごもる。
「黙ってちゃわかんねえだろ。話せ」
険しい表情で、どこか高圧的な声音で、ディオは繰り返し問いかけてくる。
それがミッション中の失敗を責めるものでなく、純粋に明日叶の心配をしているからだとわかるから、つっぱねられない。
けれど、今しがたも思い出しかけたあの光景を話す気にはなれない。
ふと、思い出したのは、ディオの過去。
以前ジャディードで、少しだけこのトゥルーアイズで視た彼の過去の姿。
そしてその後、彼本人から聞いた血まみれの凄惨な昔話。
ディオ自身はもう過去のことなど克服して今を歩んでいるかもしれないが、
やはり、辛い過去を連想させるような光景について口に出すのは躊躇われた。
それに、そんな事情がなかったにしても、あんな酷い光景を大切な相手と共有したいと誰が思うだろうか。
言えるわけがない。
「ごめん。ちょっと…その、体調が悪くて…トゥルーアイズが上手く発動できなかったみたいで…」
つっかえつつ言い繕うと、ディオの瞳の剣呑さが増した。
「…へえ、なるほど?今に始まったことじゃねえけど…ガッティーノ、お前、嘘つくの下手だよなぁ?」
視線の鋭さとまるで反比例するかのように優しい声に、逆に彼の怒りが感じられて、明日叶はびくりと身を竦ませた。
見透かす瞳でこちらをのぞきこんでくる彼の目を見返すことができず、明日叶は顔を逸らせて呟いた。
「だって…言いたく、ないんだ」
暫しの沈黙の後、耳元にディオの溜息が落ちてきた。
すっと離れた気配を追って顔を上げると、
腰に手を当てたディオがこちらを見下ろしていた。
不機嫌そうな顔ではあったが、先ほどまでの怒りは消えていた。あるいは奥に潜ませただけかもしれないが。
「ま、その話は後でまた聞く。とりあえず、俺は作戦室に行ってくる。にーさんたちも心配してるだろうから、
お前が目ぇ覚めたって伝えなきゃならねえしな」
「あ…、俺も行く!」
明日叶は慌ててベッドから降りた。自分のせいでミッションを失敗させてしまったのだ。ともかくまずは謝りたい。
ディオには難色を示されたが、絶対に行くという意志を見せると、やがて根負けしたのか、
やれやれと嘆息しつつも明日叶に手を差し伸べてくれた。
ただし、少し顔出したらすぐ戻るからなと釘を刺すのを忘れないあたりが、ディオらしかった。
作戦室では、自分たちを除いた全メンバーがそろい、話し合っていたようだった。
明日叶がドアを開ける音で中にいた皆が一斉にこちらを向いた。
「あ!明日叶ちん!大丈夫!?」
「明日叶センパイ!まだ寝てなきゃダメっスよ!」
飛びつくように声をかけてきたヒロと太陽に、「ありがとう。もう大丈夫だから」と笑みを返した明日叶は、
姿勢を正し、皆の方を向いて深く頭を下げた。
「すみません。俺のせいで、皆に迷惑をかけてしまって…」
「何を言ってるんだ、明日叶!迷惑なんてそんなわけないだろう!」
遮るように力強い声をかけてきたのは亮一だ。
ミッションの失敗はチームのリーダーたる彼に一番負担をかけるだろうに、
彼は口先だけでなく本心からそんなことを言う。
申し訳ない気持ちでいっぱいになって俯くと、亮一はさらに心配そうに声をかけてきた。
「それより、身体の方はもう大丈夫なのかい?いきなり倒れたというから驚いたよ」
「亮一クンは通信機越しだからまだしも、いきなり目の前で倒れるもんだから、こっちは何事かと思っちまいましたよ」
「眞鳥さん…すみません…」
「ああ、そこは別に謝んなくていいです。大したことがなかったなら何より。
大体、ミッションよりも身体の方がずっと大切ですからねぇ。
明日叶はそんなつまんないこと気にしないで、もっと休んだ方がいいですよぅ」
ソファにゆったりと腰掛けていた眞鳥も、そんなことを言ってひらひらと手をふる。
他のメンバーの反応も似たり寄ったりだ。
「いえ、俺一人休んでるわけにはいきません。俺にもやらせてください」
「気持ちは嬉しいけど、明日叶、君はもう少し休んでいた方がいい」
「でも…!」
そういうわけにはいかないと、勢い込んで言い募ろうとすると、
「でも、じゃねえ…!」
それまで黙って明日叶に付き添っていたディオが苛々と吐き出した。
「お前、自分がどんな顔色してるかわかってんのか?」
どんな局面でも余裕を見せているディオにしては珍しい、切羽詰ったような声色に、作戦室はしんと静まり返った。
沈黙を破ったのは珍しく慧だった。
「…それに関しては、クラウディオ・ロッティに同意だ。明日叶、顔色が悪い。もう少し休め」
「慧…」
慧は皆から少し離れた位置で壁に凭れて立っていたが、身を起こすと明日叶の前までやって来た。
「明日叶、無茶をするな。その力、いくら自由に使いこなせるようになったとは言っても、
使えば身体に疲労はたまるだろう。それに、今回の失敗はお前が気にすることじゃない」
「そういうわけにはいかない!だって、俺のせいで…!」
「それを言うなら、事前調査を怠った全員のミスだ。ある程度調べがついて対象物の危険性がわかっていれば、
お前は真贋を確かめるだけで…深く視ないようにできたはずだ」
呟くような小さな囁きに、明日叶は目を瞠った。
「慧…?」
自責の念と、明日叶への慈しみを浮かべる目の色に、明日叶は状況を知らないはずの慧が
原因を正しく理解していることに気付いた。
考えてみれば彼は、明日叶がトゥルーアイズの力に苦しみ、それを封じるまでずっと一緒にいてくれた、
辛さを理解してわかちあうことで苦しみを軽減してくれた、たった一人の幼馴染なのだ。
不調の原因に気付いても不思議ではなかった。
「…ありがとう、慧」
でも――
「でも、やっぱりミッションが失敗したのは俺のせいだから。…迷惑をかけてすみませんでした。
次はちゃんとトゥルーアイズを制御してみせます」
全員にむかって、もう一度きっちりと謝罪すると、亮一が「わかったよ、明日叶」と苦笑した。
「じゃあ、明日から頑張ってもらうよ。ただし無理は禁物だ。とりあえず今日のところはもう休んで。
…ディオ、明日叶を部屋まで送ってあげてくれないかな」
「言われなくても」
どこか面白くなさそうな顔をしつつも、ディオは明日叶を支えながら作戦室を後にした。
それから明日叶を部屋に送り届けて再びベッドに戻すまで、ディオは終始無言だった。
何かを考えているようにも見えるが、彼の思考は明日叶にはまだ量れない。
普段なら気まずいはずの重い沈黙だが、今の明日叶にとってはむしろ歓迎できるものだった。
まだあの光景が脳裏にこびりついている。今はまだ、何事もなかったように話せる自信はない。
ディオに余計な心配をさせないためにも、不自然な話し方をするよりは沈黙を通した方がましだと思った。
そう思いながらベッドに大人しく入った明日叶は、少し離れた椅子にかけたディオを一度目で追ってから、
振り切るように瞼を閉ざした。
「…か、おい、明日叶…!」
ハッと目を開けた明日叶が状況を認識するのに数秒を要した。
肩を掴んだ力強い腕に、大きく身体を揺すられて、夢の世界から呼び戻されたのだと理解する。
夢は見事に、明日叶が忘れたくても忘れられない光景を再現してくれた。
一面の紅。生のにおいがしない世界。
「ディ…オ…?」
明日叶は無意識に喉に手をやった。忙しなく上下する喉を押さえようとして、
そこで、指先がさらにみっともないほどに震えていることに気が付いた。
ぎこちなく腕を下ろそうとしたところで、その手首を取られる。
「これでもまだ、俺には言えねえ、か?」
「え…」
「全部、俺に話せよ。トゥルーアイズで、酷い光景を視たんだろ?夢に見てうなされるぐらいなら、
俺に全てぶちまけろよ。少しは楽になるかもしれねえだろ」
いきなり確信をつかれた明日叶は息を呑んで、それから唇を引き結ぶと首を横に振った。
頑なな明日叶の態度に、ディオは焦れたように目を眇めた。
「どうして?」
「どうしても何も…あんなの、聞いたって良いことなんてない。誰だって知らない方がいいに決まってる」
「それは俺が決めることだろ」
「…嫌だ」
拒む明日叶に、ディオは暫し無言になった。
値踏みするような、見透かすような眇め見る視線に気付いた明日叶はふいっとそっぽを向いた。
「へえ?その気だってんなら、いいぜ?言いたくなるようにさせてやるまでさ」
ディオの声に物騒な響きが混じったことに気付いた明日叶は慌てて身構えたが、遅かった。
まともに上から圧し掛かられてしまえば、自分よりだいぶ体格の良いディオを押しのけることなど不可能に近い。
しかも純粋な体格だけでなく、鍛え方もあちらの方が相当に上なのだから。
おまけに、器用な指と唇は、容赦なく明日叶の身体から力を奪い取っていく。
「なあ、聞かせろよ、明日叶」
「や…、いや、だ…」
ただでさえ快楽に弱い身体は、良い場所をもっとも知りつくした指先によって、呆気ないほどゆるゆると解かれていく。
「…っん」
鼻にかかった、甘えるような吐息が零れた瞬間、何とか我に返った。
羞恥にカッと頬が熱くなる。
「や、めろ、ディオ!嫌だって言ってるだろ!」
勢いで叫び、圧し掛かったディオの顔を振り仰いで、精一杯の抵抗を示すように睨み付けた。
暫く視線をぶつけ合って、先に目を逸らしたのは珍しくディオの方だった。ただし溜息のおまけ付きで。
「…少しは学習しろよ、ガッティーノ」
「え?」
「んな顔で睨まれたら、煽ってんのかとしか思えねえっての」
「な…!」
「けど、そうなったら本来の目的から逸れちまうから、今だけは引いてやるよ。
…ま、夢も見ねえほど疲れて寝るってのもひとつの手ではあるんだがな」
ディオは明日叶の上から退くと、ベッドの端に腰を落ち着け、明日叶の髪に手を伸ばしてきた。
くしゃりと髪をかきまぜる仕草はとても優しく繊細だ。衝動的に縋りつきたくなるほどに。
これもこの男の手なのかもしれない、と考えることで明日叶はその衝動を何とか殺した。
「なあ、明日叶。俺は、お前の言うことならどんなつまんねー話でも嫌な話でも何でも聞いてやるって言ったよな?
忘れたのか?」
「忘れて…ない」
「なら、お前が抱えてるものは、全部俺に曝け出せよ。全部、受け止めてやるから」
「…でもこれは自業自得なんだ。トゥルーアイズを…自分の能力をうまく制御しきれなくて失敗した俺のミスだから。
それなのにお前を巻き込むなんて…」
「…藤ヶ谷は、知ってたのにか?」
含むような声に、思わず言葉が詰まる。
あのときの慧の声は、周りに配慮したのかとても小さかったけれど、
それでも明日叶のすぐ後ろに立っていたディオにだけは聞こえていてもおかしくはない。
「それは…慧は、昔の…トゥルーアイズのことで苦しんでた俺のことを知ってるからで…。
別に、慧だけに事前に何か知らせてたとかそういうわけじゃない」
言いながら、明日叶はふとあることに気付いた。
「…ディオ、まさか慧に嫉妬してる…わけじゃない、よな」
まさかこの男に限って、と思いながらの問いの答えは、呆れたような視線だった。
少し拗ねたようにも見えるのは気のせいだろうか。
「悪いかよ」
「え?」
「嫉妬なんて、するに決まってんだろ」
予想外にまっすぐ返ってきた答えにうろたえて赤くなった明日叶だったが、
「何しろ、お前は俺のモノだからな」
傲慢な響きで付け足された言葉に、反射的に言い返していた。
「お、お前だって俺のものだろ!」
言ってから、しまった、と思った。ディオの目が、思惑通り罠にかかった獲物を見る目で満足げに笑っていたからだ。
「言ったな?」
「………言った」
以前、似たようなやり取りをしたっけなと半ば逃避気味に思い出していた明日叶の額を、ディオが軽くつつく。
「じゃあ、遠慮すんなよ。俺はお前のモノなんだから、多少無茶言ったって、甘えたって、問題ねーだろーが」
「……」
やはり口では彼には到底勝てない。もはや言う言葉が残されていない明日叶は黙り込んだ。
そんな明日叶に、ディオは根気強く囁く。
「なあ、言えよ、明日叶。…何もお前のためってわけでもねえ。ただ、俺が知りたいんだよ」
「……どうして…」
強引なくせに、促す声に潜む優しさに、目の奥が熱くなった。
「愚問だぜ、ガッティーノ。お前のことを、俺以外の誰かが俺以上に知ってるってのが気にいらねえからさ」
暗に慧のことを指して口の端をニヤリと上げて見せるが、
その眼差しが泣きたくなるほど優しくて気遣わしげなものであることを、彼は自覚しているのだろうか。
「……馬鹿」
不覚にも熱くなった目を隠すように、明日叶はディオの首に手をまわして抱きついた。
半ば必然的にベッドに縺れ込んだその後、乞われるまま、寝物語に明日叶は"悪魔の眼"に関わる昔話をディオに語った。
「…なるほどな。悪魔の眼に魅入られた奴らの、血で血を洗う惨劇ってわけか」
ディオは明日叶の身体を抱きこみながら「へえ」と相槌を打つ。
「どうして、あそこまで…、っ、ディオ!」
不意打ちで胸元に悪戯をしかけてきたディオに思考と注意とを奪われた。
明日叶は文句を言いかけたが、真っ赤な光景を思い出しかけて身震いした自分に気付いたからかもしれないと思い至り、
非難を引っ込めた。
「そんなもんさ。昔っから、曰く付きの宝石の話なんざゴロゴロしてる。魅入られた、ってことだろ」
「…理解できない」
確かに綺麗な宝石だった。けれど、それを手に入れるためには人殺しも厭わないというのは
明日叶には理解できない感情だった。
「そうか?魅入られるって感覚は、まぁわかるけどな」
「ディオ、まさかお前もあの"悪魔の眼"に魅入られたとか言うんじゃないだろうな」
明日叶は無意識の内に不安そうな目を向けた。
明日叶の感情の変化を取りこぼすはずもない男は、「大丈夫だって」と笑った。
「んな顔すんなよ。俺はもっとすげえのに既に捕まってるんだぜ?今さら"悪魔の眼"なんかに捕まるかよ」
いつものこととは言え、自信たっぷりに「大丈夫」と言い切るディオに安心しつつ、明日叶は首を傾げた。
「もっと凄いの…?」
何のことだと聞けば、ディオは答えず、ただ人の悪い笑みを浮かべて、楽しげに明日叶の瞼にキスを落とした。
2010.01.31
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STEAL!の世界観とか、STEAL!で書きたいジャンルとか方向性とか、いろいろ模索中。
で、何が書きたかったの?と問われると凹むのでそっとしておいてやってください。(…。)
なんか……思うままに書いていたら趣旨がブレました。むしろズレました。orz
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