ずっと、貴方に聞いてみたいことがありました。


今、貴方にそれを問えば貴方は答えてくれるでしょうか。
それとも誤魔化しますか。

・・・いや、わかってる。貴方はそういうことのできる人じゃない。

不器用で優しい貴方はきっと自分の中から答えを見つけ出して、そうして律儀に答えてくれるのでしょう。



わかってはいるけれど。
貴方の答えの内容もおおよその想像はつくけれど。


それでも。





「・・・一度、貴方の口から聞いてみたかったですよ、プラチナ様」





風に乗って、届くあてのない言葉は大気に溶けた。















   
 

楽園の























世界が御伽噺のようにできていたら良かったのに。





























「プラチナ様ー」

幾度か呼ぶと、やがて返る声。

「・・・なんだ」

ジェイドはひょいと肩を竦めた。

「その声。さては寝てらっしゃいましたね」
「うるさい」

明らかに不機嫌そうな声。
とは言え別に機嫌が悪いわけではなく、単に寝起きだからそういう発声になってしまっているだけだと知っているジェイドは、まったく臆することなくプラチナのすぐ傍まで近寄った。

「プラチナ様。起きてくださいよ。まったく・・・夜更かしはするくせに昼間は寝てるだなんて」
「あれは・・・どうしても本の続きが気になって」
「じゃあ今度から続きが気にならないよう、私が話の結末を先に教えてさしあげますよ」
「おまえ・・・」
それは嫌がらせだろう、と渋面で見上げてくるプラチナに、ジェイドは確信犯めいた笑顔を向けた。















眼下に広がる白い雲。そして空。

ジェイドは無感動に雲の流れを見下ろした。



かつて、あれほどに焦がれて見上げたものが、今では足の下にある。





雲を真下に見下ろす崖の淵に立つ。
この世界の果てにあたるこの場所。
ここまで来られるのは恐らく彼ぐらいしかいない。



髪は地につくほどに伸びた。
けれど軽く先を結わえるだけに留めている。

一度、高く結い上げたことがあったが、鏡を見るとひどく滑稽な気分になって、すぐに解いた。
こんな髪型、自分には似合わない。
あの人でなければ。















『綺麗な髪ですね』

何度言ったかわからない、自分なりの精一杯の賛辞。
お世辞やら美辞麗句で固めた社交辞令はあんなにも得意だったのに、あの頃の自分は本当に、本心を言うことが苦手だった。

思えば、あの頃は面と向かって好きだと言えたのは髪と顔だけだったのだ。

『そうか?』
そんなに気に入ってるならくれてやると浅く笑ったのが印象的だった。

『いりませんよ。私の髪じゃありませんしね。見てるぐらいが丁度いい』

『なるほどな。けど俺は・・・』

不覚にも一瞬息が止まった。


伸ばされた繊細そうな指先が、肩にかかる髪を一筋掬って。


『・・・うん、俺はお前の髪の方が好きだ』

















一筋、二筋ほど、結わえてあるところからはずれて前の方に零れてきているのをジェイドはそっと手で掬い上げた。





貴方が好きだと言ったこの髪。



オレはまだ切ることができない。


















 

 



by九堂 紫/2002.10.26アップ


なんというかまぁ、勝手な設定オンパレードで・・・。
いや、この時点ではまだまだですかね・・・。続きを書くとしたら凄まじく似非設定が飛び出すと思われますが。(え・・・)
かなりの長編になりそうだったのでラストのメドが立つまでアップするつもりはなかったのですが、
うっかり、これ単発でもいける・・・か?と思ってしまったのでアップ。
これで終わってもそれなりに筋は通・・・通・・・る・・・といいなぁ・・・なんて・・・。(←ダメすぎる)
えっと。で・・できればこの続きもまったり書き続けようかと。
気長にお付き合いくださると嬉しいです。

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