・・・まただ。
ジェイドは苛立たしげに呟くと、彼の心の平穏を取り戻すべく重い腰を上げた。
【花】 |
by 九堂紫 |
突然の参謀の登場に、円卓を囲んで談笑していた面々が何事かとそちらに注意を向けた。
「皆さん、お話中すみませんね。・・・プラチナ様、申し訳ありません。急いで見ていただきたい書類があるのですが」
「わかった」
プラチナは頷いた。それから部下達の顔をぐるりと一巡する。
「すまないな、皆。またの機会を楽しみにしている。・・・行くぞジェイド」
プラチナは奈落王の表情に戻ると、立ち上がり、ジェイドを従えて執務室へ向かった。
▽ ・ ▲ ・ ▽ ・ ▲ ・ ▽
「・・・急ぎ、なぁ。確かにプラチナは忙しいやろうけど。・・・どない思う?」
「どうもこうも・・・」
頭の後ろで腕を組んだルビィが問い掛けるにカロールは首を振ってみせた。
「もっとプラチナとお話したかったのです〜」
「あはは。正直だねぇプラムは。まぁ僕も同感なんだけど」
う〜と唸るプラムの頭にベリルがぽんぽんと宥めるように手を乗せ。
「あいつ、ほんっと余裕ねーのな」
最後にロードが放った一言に、全員が大きく頷いたのであった。
▽ ・ ▲ ・ ▽ ・ ▲ ・ ▽
執務室に戻ると、プラチナは定位置に腰掛け、早速書類に目を通し始めた。
傍らに控えたジェイドはその様子をじっと見守る。
暫くして、ジェイドがぽつりと呟くように言った。
「・・・プラチナ様」
「何だ」
「最近・・・笑われることが多くなりましたね」
プラチナは書類から目を離して、訝しげな表情でジェイドを振り返った。
「・・・そうか?」
「ええ」
「自分ではよくわからんが・・・しかし、それがどうかしたのか?」
「いえ、別に。プラチナ様にとって良い傾向だと思いますよ」
プラチナは手にしていた書類を机の上に戻した。
「ひっかかる物言いだな。つまり、お前にとっては良くないということか?」
「・・・穿ちすぎですよ。言ったでしょう。プラチナ様にもっと笑い方とか教えておけば良かったって。あれ本心ですよ」
うそぶいてみせるが、この程度ではプラチナは納得してはくれないようだ。
探るような視線に、ジェイドはこれも教育の賜物かと苦笑した。
「本心・・・だったんですよ」
過去形に言い直すと、プラチナはわからんというふうに小首を傾げた。
「今だとまずいことでもあるのか?」
「ええ、少しばかり」
「・・・奈落王として相応しくないということか?」
「そういうことにしときましょうかねえ」
「・・・ジェイド・・・」
「冗談ですよ。奈落王としてプラチナ様は完璧に職務をこなしておられる。まずいところなんて何もありませんよ」
「・・・。言う気はなさそうだな」
プラチナは軽く嘆息しそれ以上の問答を諦めると、再び書類に目を落とした。
ジェイドはプラチナに一歩近付く。
手を伸ばせば髪に触れられる距離。
肩を包める距離。
一線を、越えてしまいそうな距離。
ジェイドはしかしそこから動かなかった。
ただ、視線がプラチナの髪を、肩を、絡めとった。
真剣な表情で書類の束を捲るプラチナを見詰めながら思う。
本当に、この人はよく笑うようになった。
と言っても、元が笑わなさ過ぎただけかもしれないが。
それでも、時折ふわりと無防備に晒されるそれを見るたび、心がざわつく。
綻びかけた蕾はいつまでも蕾のままではいてくれない。
その事実が好ましくもあり、疎ましくもある。
けれど本当は、と。
ジェイドはひっそりと呟いた。
プラチナの耳に届かぬほどにひっそりと。
「でもね、プラチナ様・・・。俺も貴方の笑顔、好きですよ」
End
2002.09.08アップ
余裕なしジェイド。
けど、心の中で何を考えてるかはともかくとして(恐らく限りなく黒に近いグレイ)、
それを押さえ込んでる辺り、ちょっとこのジェイド・・・初々しい+イイ人?(違うだろう)
というかそんなことより!何も考えずに思うままにキーボード叩いてたら、ヘンな話になってしまいました。
いつものことながら計画性ナッシング。
シリアスタッチなのかコメディなのかはっきりしろよぉぉぉ!!ぎゃーす。
ところでこれ書いてるときに、何故か「アゲハ蝶」が頭の中をまわり、はなれなくなりました。
ナンでしょう。私の中ではこれはああいうイメージだったということでしょうか。
うーん・・・(頭の中で曲を再びまわし中)。
・・・おお。確かに、私の中のジェイプライメージに合いますねえ。それはともかく良い曲です。ええ、個人的に好きです。